「学び」を通してスラムの子どもたちの未来を創る
クロントイスラム内に事務所を構えるシーカー・アジア財団
貧困の連鎖。スラムには実際にその言葉が存在しています。シーカー・アジア財団は、「学びの機会」を与えることでその連鎖を断ち切ろうとさまざまな活動を行っています。その事務局長であり、クロントイスラムで生まれ育ったアルニーさんに、子どもたちを取り巻く環境について尋ねました。
シーカー・アジア財団事務局長・アルニーさん
「貧困層の子どもたちは勉強ができないわけではありません。勉強の“機会”がないだけです」
「私が子どもの頃のクロントイスラムは、どこもかしこも悪臭だらけ。地面は水が貯まった湿地でぬかるんでいてゴミもたくさんあって……。区画整理があったこともあり、その時から比べると今財団があるエリアは格段に良くなりました。けれど、少し裏道に入ると以前と変わらない街なみがあるのも事実です。シンナー中毒者や薬物乱用者もいて、子どもたちが日中ふらふらと出歩いていると危ない目に遭遇する可能性もあるので、この場所が子どもたちの安らぎの場になれればと思っています。
表の通りを一本裏に入ると入り組んだ狭い道が続く
裏道を自転車で走る女の子
家の形はさまざま。屋根やドアがなかったり、半分以上が水に浸っている家もあるのだとか
スラム内では、学習や読書に対する意識が変わってきました。これまで、クロントイ出身の人たちがスラムの外に出て活動してきたからこそです。その後ろ姿を見て、自分たちも、という人たちが増えて来ているんだと思います。『スラムの天使』と称されるプラティープ・ウンソンタムさん※もそのひとりです。ただ、一般的に持たれるスラムのイメージはよくはありません。そのため、スラムに対するイメージを改善していくことが今の課題です」
※クロントイスラムでの教育活動が評価され、アジアのノーベル賞と言われるマグサイサイ賞やその他世界的な賞を獲得。同スラム内にあるドゥアン・プラティープ財団の創設者。
財団内にある図書館スペース。本を読むだけでなくワークショップや踊りの場としても活用
みんなで円になってギターのワークショップ
放課後は子どもたちが集まって来る
財団事務所の前でイベントを行うことも
本財団の事務局長・アルニーさんと日本人スタッフの吉田さん(右)。
「いろいろな知識や特技をお持ちのバンコクマダム読者のみなさま。ぜひその特技をここで披露しませんか?」
※シーカー・アジア財団の紹介ページは、こちら
(取材・文:山形美郷)