スペシャルインタビュー
子どもから大人まで、さらにはペットまで一緒に過ごせる注目のコミュニティモール「The COMMONS(コモンズ)」は、ROASTでも紹介したオーナーさんがA4用紙60枚分の設計アイディアを掲げて実現したこだわりの空間。ここに入っている30店はオーナー自ら声をかけた、魅力あるお店だけ。各フロアには植物が並び、お店を利用しなくても気軽に休めるスペースもあり。心地よさと開放感が建物全体にあふれています。
そんな気持ちのいい空間を造り出したオーナーのお二人にコモンズのこと、トンローのこと、これからのことを聞いてきました。
左からお姉さんのタオさん、弟のテーさん。
インタビュー中、4年間の構想を思い返しながら、笑顔を見せながら話してくれたのが印象的だった。そこには用意された、作られた言葉はひとつもなかった
——— 今まではカフェ「ROAST」や焙煎屋「ROOTS」として活動してきていますが、なんでコミュニティモールをオープンしようと思ったんですか?
この計画が始まったのが今から約4年前。小さな子どもからお母さん、お父さん、その上のおじいちゃん、おばあちゃんまで、家族みんなが過ごせる場所を造りたかったんです。そして、自分たちと同じ志を持った人たちが集まる空間を造りたかったのがきっかけです。自分の好きな物に向かって全力で向き合っているお店。ここにはそんなお店が集まっています。
写真は最上階にあるロースト。先で話している言葉を率先している先鋭のカフェだ
——— なんでトンローを選んだんですか?
私たちはトンローに子どもの頃から20年以上住んでいました。そんな慣れ親しんだ場所に出したいと思ったし、トンローにはさまざまな魅力があります。このエリアには、流行に敏感な人たちが集まるとともに、新しい流行やカルチャーをすぐに受け入れられる柔軟な人たちが集まっています。またアクセスもしやすいし、いろいろなバリエーションのお店があって、どんなタイプの人でもそれぞれに楽しめる。だから今、新しいお店がどんどん集まってくるんだと思います。
——— 構想から今まで、どのような経緯で進んで来たか聞かせてもらえますか?
まずは、コンセプトを決めるところから。その後に、自分たちと同じ志を持つお店に二人で地道に声をかけていきました。並行して、資金集めも行っていましたよ。それが一番大変だったかな(笑)。僕たちがやろうとしていることは、利益を度外視しているところがあるから、金融系の人たちはなかなか納得してくれないんです。それでも何とか協力者が集まり、工事が始まりました。
——— 自分たちで一つひとつ、お店を口説くことから始めてきたんですね。そこにはいろいろな思い入れがあると思いますが……工事が始まる時に「ここだけは譲れない」と考えていた、建物に関するポイントはありますか?
……そうですね。そもそもやりたいことがありすぎて。工事が始まる前の打ち合わせ段階ではA4用紙60枚分の設計アイディアが目の前に出来上がっていました(笑)。
その中でも大切にしていたのは、「自分の家の庭のようなリラックスできる空間づくり」と「屋外で気軽に休めるスペースづくり」です。各フロアには植物を置くとともに、お店に入らなくても利用できるアウトドア席を用意しました。そうしたら、コモンズに来てただ休むだけでもOKですよね。そんな、ふらっと気軽に立ち寄ることができる場所を意識しました。それに、エアコンが効いた室内だけじゃなく、外の気持ちよさも感じられる場所も欲しいと思っていました。
どのフロアにも植物があり、外で過ごす気持ちよさを教えてくれる。写真は最上階のちょっとしたスペース
ここにはスターバックスなどのチェーン店はありません。オリジナルのお店だけです。そんなコンセプトを理解してくれた人たちがここには集まっています。それに、コマーシャル(PR)のスペースもありません。本当にいいものだけが、ここにはあります。
あと、大型デパートではできないことをやろうと思いました。デパートなどだと上のフロアに行くに連れて人が少なくなる傾向があるのですが、それを解消するにはどうしたらいいか……。上に進みたくなるような(わくわくするような)仕掛けを作らなければと考えました。ここにはエスカレーターがありません。エレベーターも奥にこっそり潜んでいます。理由は、階段を使って自分の足で登ってほしいから。そうすることで、各フロアにどんなお店があるか確認することもできますよね?そうして一つひとつ自分の目で見て、楽しんでほしいと思っています。
一角にはアート作品が飾られたスペースも
それともう一つ、各フロアを明確に隔てないこと、仕切りを作らないことです。どこにいても他のフロアを見通せる開放感と、どこにいても面白い物を見つけられることを意識しました。
吹き抜けの造りが、こだわりどころ
——— オープンして約半年経ちましたが、今の状況はいかがですか?
そうですね……予想通りだったのは、コモンズの周りに住んでいる人たちが大勢来てくれたこと。予想していなかったのは、ここの周りに住んでいない人たちも大勢来てくれたことです。遠くからも来てくれる人たちがいたことは、とてもうれしい。私たちはターゲットを絞らず、いつでも、どんな人たちでも来てほしいと思っているので。そしてここに来た人たちが、「また来たい」と思ってくれるのが一番うれしいです。
——— すてきな笑顔で話してくれたお二人に、最後の質問です。長く愛されるお店に必要なものは、なんだと思いますか?
何に対しても正直に、真摯に、ひたむきに。正しいことをやり続ける、それを信じ続ける気持ちと行動力でしょうか。あとは、何かいいことが起きるのを待つのではなく、自分から行動する(give)すること。そうしていれば、自分にいいことが返って来ると思っています。
例えば、お客さんに対してよりよいおもてなしをすれば、そのお客さんはリピーターとしてまたお店に来てくれる。その繰り返しですよね。
——— 本当にそうですね。今日は、すてきなお話をありがとうございました。
The COMMONS
335 Thonglor17(BTSトンロー駅から車で5分)
www.facebook.com/thecommonsbkk
(取材・文:山形美郷)