自然の音に導かれた先に
タクツァン僧院
ブータンに訪れたほとんどの人が目指すと言われるタクツァン僧院は、今でも僧侶たちが修行を行う神聖な場所。標高3000m、往復で約5時間。その道のりで出合うものは———?
タクツァン僧院への登山口手前、簡易な看板を見つけて緊張がほどけた
17世紀に建てられたタクツァン僧院を大火が襲ったのは1998年。けれど、そんな中でも焼けずに残った部屋が3つ。そこはかつての大僧正が瞑想を続けた部屋であり、火さえも寄せつけない、見えない力があると信じられています※1。
※1 改修工事が終わったのが2004年。現在は僧院の中に10の部屋(お寺)があります。
スタートは、富士山の5合目より少し高い場所にある登山口。6歳の子どもから70歳ほどのおばあちゃんまでが登っている姿を見ると、足も自然に前へ進みます※2
※2登山をする前には必ず体調をご確認ください。年齢の目安は小学校中・高学年から。
登山口付近で待機する馬たち。全行程の半分ほどまでは馬に乗っていくことができる
登山口付近から見たタクツァン僧院。岩肌に張り付くように佇んでいる
死んだ人をまつるツァツァ。景色のいい場所や岩の隙間に置かれることが多い
風に揺れる木々、土を蹴る足音、はためく五色の旗、軽やかに響く鳥の声、そして自分の呼吸……進むたびに、いろいろな角度から聞こえる自然の音に触れ、穏やかな気持ちが全身に満ちていきます。
登り始めて1時間ほどの場所にあるマニ車。その右奥には僧院が見える
カフェから40分ほどの場所にある展望台。ここから僧院がきれいに見える
登り始めてから2時間。山肌に沿って作られた急な石段を、ゴウゴウと鳴る横風に耐えながら下り、上り———
やっとの思いで僧院にたどり着いた瞬間、外の音がピタッと止みました。まるで別世界へ来たような錯覚、不思議な力で守られているような安心感と温かさ。時代を経ても、過酷な道のりの中でも、多くの人がこの場所を目指す理由を感じました。
そして
「とってもすてきなところだったよ!ぜひ行ってほしい!」と興奮気味に話すタイ人の友人のことを、ふと思い出しました。