My Life - 洋服デザイナー 鈴木弘美さん -
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服から生まれる幸せの連鎖。私にしかできないものを作る
着心地のいいfuwariのワンピース
キャハハっと少女のように無邪気に笑い、昔の辛い記憶を思い出して唇を噛み、世界中の人が幸せになる服を届けたいとやさしく微笑む。「Atelier fuwari(以下、fuwari)」のデザイナー・弘美さんは、まさにこのブランド名のようにふわりと身軽に日々を生き、透き通る空気のように繊細な感覚の持ち主である。
袖を通した時に感じるやさしい肌触り、歩いている時に感じる風通しの良さ、風が吹いた時のふわりとしたシルエット。
「大切にしていることは、やっぱり着心地がいいこと。それと、季節に合わせた着こなしができるよう、合わせやすく、何枚着ても重く見えないものを意識しています」と、弘美さんは言います。
タイと日本で展開する、オーガニックな素材を使ったナチュラルなデザインが特徴の洋服ブランドfuwari。記念すべき一着目は、お店を、布を、コーディネーターさんを探し回り、満足する仕上がりになるまで何十着ものサンプルを作ったそう。すべては、自分が着たいと思える服を作るために。リネンは日本、イタリア、フランスから、オーガニックコットンは日本で作られ、自分が納得した選りすぐりのものを使用。「最初にうまくいかないのが良かったのかもしれないですね。スイスイいってたら、深く考えずに単調な服になっていたかもしれないし」。
fuwariの服は、基本的にはウェブでの注文は受けていません。理由は、自分で触って、試着して、服の良さを感じて買ってほしいから。そこには、自分の作る服に、お客さんに、服作りに関わる人すべてに、真摯に向き合う弘美さんの姿がありました。
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服作りから、その先へ。すべての出会いはつながっている
肌触りにこだわり、日本から取り寄せているオーガニックコットン
「見ていないで、タイで自分で作ったらどう?」 親しい友人のそのひと言で当時の仕事を辞め、2009年の冬、旦那さんの駐在に伴いタイに来ました。2010年からfuwariオープンのために始動するけれど、肝心の販売店舗が見つからず。もう洋服の販売は諦めようか……そんなことを考えていた2013年。東京都・恵比寿にあるナチュラル思考の先駆け的な存在の生活道具屋「Ekoka」に訪れた時に店主の方から声がかかり、展示会をすることが決定。そこからは加速するようにいろんなことが進み始め、日本へ服を卸すルートや展示会など多くの機会と巡り合うように。今年の6月には、バンコク在住のクリエーター5人とともに展示会「旅するマルシェ」を初開催し、大盛況でした。
デザインは、大好きなジョージア・オキーフからデザインのヒントを得ている
弘美さんは服のデザインをする一方で、売り上げの一部をタイ政府から認可された公益財団法人やラルシュマイメイシンの「ごはん基金」へ寄付するなど、様々なサポートも行っています。こうしてfuwariの服には、お客さんの手元に渡った後にもストーリーが続いていきます。ただ、弘美さんはそれをお客さんに押し付けたりはしません 。
「もちろん服を通して多くの人に幸せになってほしいし、サポートもしていきたい。けれども、そんなことは関係なく、素直な気持ちでいいと思って手に取ってほしいです」
どこまでも、気持ちのいい人です。今は、ウェディングドレスを初めて製作中。今年の9月に、屋久島の大自然の中で挙式するというfuwariのお客様のために。荘厳なエネルギーを放つ屋久杉の濃い緑に囲まれながら、羽が生えたような軽さのドレスを身にまとい、幸せな空気に包まれる。そんな日になるだろうことは、きっと想像に難くないはずです。
- Atelier fuwari
- hibinofuku.exblog.jp